「マディソン郡の橋」と不倫
「マディソン郡の橋」は、アメリカの、農業が盛んでのどかなアイオワ州で出会った男女の、たった四日間の恋の物語です。そして不倫のお話。実際にストーリーにも登場する二人の子供達がきっかけで、実際にあった話をモデルに作られました。作者はこの話を聞いて、ぜひ作品として残すべきだと考えたそうです。作者は共感したようですが、主人公たちに共感できるかどうかで、かなりはっきり評価が分かれる作品でしょう。
ちょっとぶっきらぼうな旦那と、二人の子供がいる平凡な主婦、フランチェスカは、取材で訪れたカメラマン、ロバートと出会います。その時たまたま旦那さんと子供は留守にしていて、あっという間に不倫関係になってしまうのです。二人にとってその不倫の恋ことが人生一度きりの大恋愛。ですが夫と子供がいる女性は家族を捨てることができず、カメラマンもその彼女の気持ちを尊重し、別れた後は二度と生きて合うことはありませんでした。夫の死後に、彼女はカメラマンがすでになくなっていて、自分の住むな所の近くにある橋に散骨されたことを知ります。そして彼女も遺言で、彼と同じ場所へ散骨してほしいと頼み、二人は死後再開を果たすのです。報われない恋でしたが、せめて死んだ後はそばにいたい、そんな気持ちに共感できる人にとっては美しい物語と感じることができます。
ですが結局好きでもない夫と仮面夫婦を続け、心の中では裏切り続けた彼女は不誠実だと思えば、単なる不倫を綺麗ごとに仕立て上げた話にも映ります。善良で妻を愛する夫ではありますが、不倫相手より妻をときめかせる事が出来ない男。そんな平凡な夫のために、彼女は我慢や忍耐を強いられていると感じているのです。平凡な生活への不満があるからこそ、彼女はあっさり不倫をしてしまったともいえるでしょう。旦那さんが気の毒といえば、かなりお気の毒。彼は彼女の不貞を知ることなくこの世を去りますが、それが良かったのかどうかはわかりません。
最終的に結婚に至らずに不倫関係に至る男女は、本気であればあるほど、自分が不幸な結婚をしていると嘆いていることが多いようです。不倫をする人が、全員そうとは限りませんが、不幸に酔っているだけの人は、「マディソン郡の橋」のように多くの人の共感を得ることはあり得ない、これは間違いないでしょう。